私は約20年間、政府機関に勤務し、防衛、インテリジェンス、新興技術が交差する分野で官民連携にも数多く携わってきました。国家安全保障局(NSA)やホワイトハウスで要職を務める中で、テクノロジーが急速に進歩し、地政学的な影響力や産業力、国家安全保障を支える柱となっていく過程を間近で見てきました。
このたび、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)のゼネラルパートナー兼グローバル・アフェアーズ責任者に就任しました。今後はこの新たな立場で国家安全保障に取り組み、米国の安全を守るために技術革新の成果を確実に生かすという使命を引き続き担うとともに、同盟国とともに、より安全で豊かな未来を築いていきます。
テクノロジーに求められる新たな役割
国家安全保障とテクノロジーの関係は今、変化しつつあります。その背景を理解するには、この40年間で地政学的な情勢がどう変化してきたかを振り返る必要があります。
冷戦時代の技術開発は、米国とソ連の対立を背景に、国家主導の閉鎖的な取り組みとして進められていました。GPSや初期の衛星通信などのイノベーションは、主に防衛産業基盤の中で生まれ、民間への波及は限定的でした。当時の目的は、中央集権的な統制による封じ込めと技術的優位の確保にあったからです。
2000年代に入ると、米国発のテクノロジーが国境を越えて急速に普及しました。世界に広がったWintel(Windows/Intel)アーキテクチャからモバイルインターネットの台頭まで、イノベーションを主導したのは民間企業でした。米国のテクノロジーを標準規格とする国際秩序が世界の安定を支え、サプライチェーンの統合は平和を維持する仕組みになると考えられていました。
しかし、米国と中国が世界の覇権を競う中、テクノロジーの普及は地政学的な影響を受け、分断化が進んでいます。安全保障の確保には、デジタル主権、サプライチェーンの強靱性、そして経済と国家安全保障を支えるインフラの信頼性に重点を置く必要があります。
テクノロジーは国家安全保障の要
各国の政府関係者と話すと、それぞれの国の方針が見えてきます。同盟国は、防衛力の強化や国の再建を進めながら、国民の暮らしをどう支え、競争力をどう高めるかを再考しています。同盟国が求めているのは、米国の技術を「購入」することだけではありません。共同事業や体制の共有、共同生産をともに実現したいと考えています。
こうしたニーズに応えるため、米国が取り組むべき戦略的課題は2つあります。第1の課題は、米国と同盟国が共通の技術基盤を整備できるようにすることです。太平洋から大西洋まで、同盟国はここ数十年で最も深刻な脅威に直面しています。安定の維持には、同盟国が自国のニーズに応じて米国の革新的な技術を導入し、自国のシステムに組み込んで活用できるようにする必要があります。
第2の課題はAIや新技術を世界に普及させることです。世界のオープンソースAIのシェアを正確に把握するのは容易ではありません。インフラの導入状況を基準にするのか、実際のトークン処理量で測るのかによって、数字が異なるためです。しかし、中国製のオープンソース・モデルの採用が増加していることは明らかです。私たちは、米国のAIインフラやアプリケーションが広く採用されるようにしたいと考えています。防衛、航空宇宙、サイバー・セキュリティに革新をもたらす最先端企業が成功するには、世界に事業を展開する必要があります。こうした企業は、地政学的な逆風に加え、国や地域ごとに異なる規制によって、ますます複雑化する事業環境への対応を迫られています。
同盟国が求めているのは、もはや単なる売り手と買い手の関係ではありません。米国とともに技術や産業を育てていくことです。先日、日本を訪問した際にも、この変化を改めて実感しました。高市早苗首相、赤澤亮正経済産業大臣、国家安全保障の担当幹部、日本企業の経営者と会談し、日本の経済成長と防衛の近代化を支えるために、海上の自律運航技術、AI、サイバー・セキュリティの分野で連携の可能性を探りました。
同盟国とともに安全で豊かな未来を実現するためには、これからも多くの課題に取り組む必要があります。アンドリーセン・ホロウィッツで私たちがよく口にするように、「it’s time to build; together(今こそ、ともに築くとき)」なのです。